●懐古
まだ応援団にも入っていなかった高校生の頃。
駅の近くにあった小さいレコード屋が、
私の唯一のサザンに関する情報源だった。
新譜情報が書いてある小さい紙を欠かさずチェックして、
そこにサザンの文字を見つけた時は嬉しかった。
初めて買った『Bye Bye My Love』のEP。
薄くした学生鞄に折れたりしないようにそうっと入れ、
一目散に家まで自転車を飛ばしたのを今でも憶えてる。
ステレオに辿り着くなり丁寧に透明の袋からEP本体を取り出し、
スプレーをかけ埃を取り針を落とす。
折れないように大事にジャケットの裏の歌詞を見ながら、
新曲との初対面を果たす。
何の先入観も無く真っ白な状態で聴く新曲。
1回目では分からず2回・3回と聴いていくうちに、
すっかり虜になり桑田さんの細かい歌い方を真似て歌っている自分に気付く…。
今回の騒動で私はこんなことを思い出していた。
今は確かに情報がすぐ手に入る便利な時代。
ただそれが幸せなことなのかと言われると即答出来ない。
知らなくても幸せなこともあるはずだと思う。
新曲発売1ヶ月前には全容を知り、
発売時には楽しみがほとんど無くなっている現在。
そしてそのうちボタンひとつでダウンロードされるだけになってしまうかも知れない。
「便利になる」ということはそれだけ「不便故の幸せ」を失っているということ。
忘れられて行くのだろうけどその中に大切なものがある気がする。
…熱い波が、また揺れる…